REIMAGINESでAI関連の解説を担当しているミリアです。
2025年5月に開催されたGoogle I/Oでは、次世代AIモデル「Gemini(ジェミニ)」シリーズの進化が発表され、世界中で大きな話題となりました。
**「Gemini 1.5 Pro」「Flash」「Live」「Project Astra」「Imagen 3/4」「Veo」**など、次々と出てくる専門用語に戸惑った方も多いのではないでしょうか?
この記事では、それらの機能や用途をやさしく整理しながら、ビジネスや日常の活用例も交えて、実務に役立つかたちでご紹介していきます。
情報管理、業務改善、発信活動など、AIをもっと活かしたい方に向けて、Google Geminiの「今」をわかりやすくまとめていきます。
目次
🔹① Gemini 1.5 Proとは?
Googleが開発した次世代AIモデル「Gemini 1.5 Pro」の最大の特徴は、最大100万トークン(約70〜80万日本語文字相当)を記憶できるという、圧倒的な情報保持能力にあります。
これは複数の長文ファイルや大量の会話履歴を読み込んだ上で、文脈を保ちながら整合性ある応答ができるということを意味します。
さらに「Deep Think(ディープ・シンク)」という推論モードが搭載されており、複雑な数式の扱いや因果関係の解析、コード設計といった高度な思考が必要なタスクにも対応。
たとえば会議録の要点整理、法務・契約書の読み解き、設計図の考察などにおいて、情報を“読む・理解する・提案する”という一連の流れをAIに任せることが可能になります。
このモデルは、単なるQ&Aではなく**“考えるAI”としての立ち位置を確立**しており、知的生産業務の補助パートナーとして極めて有用です。
🔹② Gemini Flashとは?
「Gemini Flash」は、「スピード」と「軽さ」に特化したGeminiシリーズのライトモデルです。
応答時間が速く、消費リソースも少ないため、定型業務や日常のタスクに幅広く活用できます。
たとえば、メール文面の草案づくり、簡易な議事録要約、SNS投稿文の提案、カジュアルなアイデア出しなど。
細かなニュアンス調整よりも、「今すぐ形にしたい」状況で特に威力を発揮します。
また、処理コストが軽いため、将来的にはモバイル端末やIoTデバイスでの常時稼働も視野に入っており、「どこでもAIがそばにいる」環境が整っていく基盤とも言えるでしょう。
Flashは、実務における**“初動スピード”を強化するための右腕**です。
🔹③ Gemini Liveとは?

「Gemini Live」は、カメラやマイクを通じてユーザーとリアルタイムで対話できる、次世代型のAIインターフェースです。
音声を使って話しかけたり、スマートフォン越しに映像を見せながら質問することが可能で、まるで**“その場にいる誰か”と会話しているような体験**を実現します。
たとえば、操作方法が分からない機器を映して「これどう使うの?」と尋ねると、AIが視覚的に状況を理解し、口頭で説明してくれる……そんな活用イメージです。
この仕組みは、現場作業や製造業、遠隔サポート、医療・教育分野など、“現場での即応”が求められるシーンにおいて、非常に大きな力になります。
従来のように検索して答えを探すのではなく、**「目の前にいてくれるAI」**として、人と空間に寄り添うスタイルへの転換を感じさせます。
今後は、ARデバイスやスマートグラスとの連携によって、さらに没入感のあるAI体験が広がると見られています。
🔹④ Project Astraとは?
「Project Astra(プロジェクト・アストラ)」は、Gemini Liveの技術をさらに発展させた、視覚と音声の両方に対応する“多感覚AI”のプロジェクトです。
AIがユーザーの周囲の状況をリアルタイムで把握し、視覚情報に基づいた適切な応答を返すことを目的としています。
たとえば、机の上のアイテムをカメラ越しに見せながら「この中で不要なものはどれ?」と聞くと、AIがそれぞれを認識し、理由を添えて答えてくれる──そんな“場の理解力”を備えたAIです。
Astraは、音声・映像・文脈を統合して処理することで、単なるツールではなく、共に考える「アシスタント」や「観察者」的存在になろうとしています。
特に教育・研究・クリエイティブの現場では、「思考中の様子」や「観察している過程」に寄り添うAIとして活用されていく可能性が高いです。
将来的には、AR空間での作業支援や、身体拡張的な“サードアイ”的存在になるかもしれません。
🔹⑤ Project Marinerとは?
「Project Mariner(プロジェクト・マリナー)」は、ユーザーのタスクや操作を“代わりにやってくれる”ことを目指した自律型AIプロジェクトです。
いわば“AI秘書”や“自走エージェント”といった立ち位置で、Geminiシリーズを中心に進化しています。
たとえば、「このホテルを比較して予約して」「このページから必要な情報だけ抜き出してまとめて」といった指示を出すと、ウェブを横断的に読み取り、目的に応じて自動で処理を行うことが目標です。
Marinerが目指しているのは、単なるチャットでの応答ではなく、**「指示しなくても気づいて動いてくれるAI」**の実現です。
これはビジネス用途でも強力な武器になり、情報収集・業務代行・意思決定補助など、多くの場面で人間の「脳外スタッフ」として働ける可能性を秘めています。
今後はGmail・Googleカレンダー・Driveなど、Google製品との統合がさらに進み、日常の業務がほぼAIに代行される未来も想像できます。
🔹⑥ Imagen 3 / Imagen 4とは?(画像生成AI)

「Imagen(イマジェン)」シリーズは、Googleが開発する高精度な画像生成AIです。
現在の最新版はImagen 3とImagen 4で、Geminiとの連携や実用化の進展が発表されました。
Imagenの特徴は、テキストから極めて高品質な画像を生成できること。
特にImagen 3では写実的かつ柔らかな画風、Imagen 4ではより構造的・詳細描写に優れたアウトプットが可能になっています。
ビジネス用途では、プレゼン資料や広告バナーの生成、製品デザインの初期案出しなどに活用され始めており、「デザイナーの補佐AI」として注目されています。
また、Geminiとの連携により、文脈や会話の流れに沿って画像を動的に生成するような使い方も可能になっており、ストーリー性や意図を反映した出力が得られる点が大きな進化ポイントです。
従来の画像生成AIにありがちだった“ランダムさ”や“意図とのズレ”が減り、**「会話で指示できる画像生成」**というUXが実現しつつあります。
🔹⑦ Veoとは?(動画生成AI)
「Veo(ヴェオ)」は、Googleが開発した次世代の動画生成AIモデルで、テキストや画像から短編動画を生成することが可能です。
簡単なキーワードやストーリーテキストを入力するだけで、構成・動き・演出が一体化された映像を自動的に作り上げます。
Veoの特徴は、動きの滑らかさ・背景の深度・質感表現において高水準を実現している点にあります。
現時点ではプロンプトベースでの操作が中心ですが、将来的にはGeminiとの連携により「会話しながら映像を作る」スタイルも期待されています。
動画クリエイターに限らず、プレゼン動画、教育コンテンツ、商品説明用の映像作成など、幅広い実務シーンに適用可能で、映像制作のハードルを大きく下げる技術として注目されています。
特にマーケティング部門やSNS運用担当者にとって、Veoは“AIによる映像パートナー”となりうる存在です。
🔹⑧ MusicFX / AudioFXとは?
「MusicFX(ミュージック・エフエックス)」と「AudioFX(オーディオ・エフエックス)」は、Googleの音楽・効果音生成AIです。
どちらもテキストから音を生成することができ、「シーンに合ったBGMを一瞬で作る」ことを可能にします。
MusicFXは、ジャンル・テンポ・雰囲気を指定するだけで、オリジナル楽曲を数秒で生成。
AudioFXは、環境音や効果音(雨音・足音・ドアの開閉音など)を自在に作り出す技術で、映像・ゲーム・プレゼンの音響演出に活用されはじめています。
これにより、音楽制作の知識がなくても、コンテンツにぴったりの“音の背景”を手軽に追加できる時代が到来しました。
Geminiとの連携により、「この映像に合う音をつけて」と話しかければ即座に生成できるような一体化も進んでいます。
🔹⑨ NotebookLM(新バージョン)とは?

「NotebookLM(ノートブック・エルエム)」は、自分のアップロードしたドキュメントやノートをもとにAIと対話できる学習・作業支援ツールです。
最新版ではGeminiが統合されており、読み込ませた資料に関して質問・要約・構造整理・比較分析など、きめ細かな作業が可能になりました。
たとえば、議事録・講義ノート・企画書・技術仕様書などをアップロードしておけば、**「ここに矛盾はある?」「まとめを作って」「この章とこの章の違いを教えて」**といった対話型の操作ができます。
これは「自分専用の調査員」や「賢いノートの精霊」といった立ち位置で、インプットの精度を高めながらアウトプットにも直結する機能です。
業務の効率化だけでなく、学習や執筆、分析などの“思考系タスク”にも強く作用するAIツールとして、注目が集まっています。
🔹⑩ Googleサービスとの統合強化
Geminiは、単体での活用にとどまらず、Googleの主要サービス群と深く統合され始めています。
特に注目されているのが、Chrome・Gmail・Google Drive・Google Meetなどへの直接統合です。
たとえばChromeでは、開いているウェブページを要約したり、複数タブをまたいで情報を整理してくれる機能が試験導入されており、“読んで探す”から“読ませて任せる”スタイルへの転換が進んでいます。
Gmailでは、過去のやりとりを参照しながらメール文を提案・補完する形での活用が可能に。Drive上のドキュメントを理解・要約し、会議資料の草案として提案するなど、実務に直結したサポートが進化しています。
GeminiがGoogleサービスの“影の助手”として働くことにより、個人業務の多くが自然に自動化されていく流れが強まっており、今後はGoogle Workspace全体での展開が本格化する見通しです。
🔹⑪ GeminiとChatGPTの違いは?
よく話題に上がるのが、「GeminiとChatGPTは何が違うの?」という点です。
どちらも大規模言語モデル(LLM)を用いたAIですが、思想・統合範囲・応用方向性にいくつか違いがあります。
まずGeminiは、Googleエコシステムとの統合を前提とした“現実世界との接続”に強い設計思想を持っています。音声・映像・AR・検索・マップなど、実用的なシーンでの補助を想定した構成です。
一方でChatGPT(GPT-4o)は、会話体験と応答の自然さに重きを置いた、情報的な対話構文に強い傾向があります。
また、画像生成やマルチモーダル機能に関しては、Geminiは今後Google製AI(Imagen, Veo, MusicFXなど)との連携強化が進み、総合的な「AIツール群の中核」へと進化しつつあるのが特徴です。
要約すれば、ChatGPTが「言葉の魔導士」なら、Geminiは「現実に寄り添う戦略参謀」といった違いがあるといえるでしょう。
🔹⑫ AIを実務に活かすために:視点のまとめ

ここまでご紹介したGeminiの各機能は、単なる“便利ツール”ではなく、業務の構造そのものを再設計する力を持つ存在です。
・思考と構造の補助役 → Gemini 1.5 Pro / NotebookLM
・初動と反復の効率化 → Flash / Gmail連携
・空間と状況の理解 → Live / Astra
・創作と表現の加速 → Imagen / Veo / MusicFX
このように、Geminiシリーズは「どのタスクを、どのAIに任せるか?」という業務分解の設計図を描く発想にぴったり合致します。
今後AIを取り入れていく上で大切なのは、単なる“便利さ”よりも、「何をAIに委ね、何を人間が担うか」を見極める視点です。
Geminiは、その見極めを支え、行動に落とし込むパートナーとして、すでに多くの実務領域で本格的に活躍を始めています。
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